「ペーパーレス」「ペーパーレス化」などの言葉をよく耳にするようになりました。

日本政府は現在、ペーパーレスを推進しています。企業の文書に関して、2016年の法改正によりすべての契約書や領収書の電子保存が認められるようになりました。また、2017年には領収書などをスマートフォンのカメラなどで撮影し、電子化することが認められるようになりました。

2018年6月には基本政策「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定され、政府が行政サービスのデジタル改革を行い、その仕組みとノウハウを地方に展開していくという方向性や、民間のデジタル化を推進するためのルール作りなどについて計画されています。

参考:世界最先端デジタル国家創造宣言 ・ 官民データ活用推進基本計画

今回は、そんなペーパーレスについて詳しく解説していきます。

ペーパーレスとは?

ペーパーレスとは、今まで使っていた紙(ペーパー)書類を電子化し、保存・運用することを言います。
広義には切符のICカード化なども含まれますが、ビジネス上で使われる「ペーパーレス」は社内の紙帳票や契約書・資料などを電子化し、クラウドサービスなどのシステムを利用して保存・運用することを言います。

ペーパーレス化の目的

それでは、何のためにペーパーレス化を推進する必要があるのでしょうか? 大きく、3つのことが言えます。

  • 業務改善による効率化
  • コスト削減
  • 環境保護

業務改善による効率化

働き方改革関連法の施行などにより、企業には昔以上に業務効率の向上が求められています。長時間労働などを減らしながら、これまでと同様かそれ以上に成果を出し続けるためには、不要な業務をなくして効率化していかないといけません。
さらに、コロナ禍の影響でテレワークが推進される中、今まで以上に業務改善に取り組む必要があります。
ペーパーレスによってこうした課題を軽減し、業務時間の短縮や場所や時間にとらわれないワークスタイルを実現できます。

コスト削減

ペーパーレスにより、様々なコストを削減できます。紙運用を行う場合、紙代印刷代、そして紙を回す際にかかる人件費時間、その書類を保存するための保管費、処分する際の破棄費がかかります。ペーパーレス化を進めることにより、それらのコストを削減することができます。一方、ペーパーレス化のためにかかってくるコストもあります。かかってくるコストについてはペーパーレス化のデメリットの項目を参考にしてください。

環境保護

紙はもともと木材からできています。つまり、紙を利用すればその分森林を伐採しているということになり、過剰な伐採は森林破壊につながります。森は生態系を維持し、大気中の二酸化炭素を吸収してくれるとても大切な資源です。ペーパーレス化を進めることは結果として伐採される木材の量を減らし、環境保護に繋がります。

昨今話題のSDGsでも、ペーパーレスが推奨されています。ペーパーレス化を進める企業は環境に配慮している企業として企業価値も向上します。そのような観点もあって、最近ではより一層のペーパーレス化に取り組む企業も増えています。

”持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。”

出典:外務省「SDGsとは?」

SDGsの17のゴールのうち、ペーパーレスは8番(働きがいも経済成長も)と12番(つくる責任つかう責任)に当たります。

ペーパーレス化のメリットとデメリット

ペーパーレスにはメリットとデメリットがあります。メリットは利用を開始するタイミングから実感できるのに対し、デメリットは移行中から感じるものが大半です。ペーパーレス化を成功させるために、メリットだけでなく、移行時に感じるデメリット部分も理解しておくとスムーズなペーパーレス化が行えるでしょう。

では、具体的なペーパーレス化のメリットとデメリットをご紹介します。

ペーパーレス化のメリット

1.在宅勤務やテレワークなどの柔軟な働き方に対応できる

ペーパーレス化に伴い、物理的な紙でのやり取りがなくなることで、時間や場所を問わず業務を行うことが可能となります。例えば、タイムカードを勤怠管理システムなどに置き換えれば、在宅勤務やテレワークにも対応できます。また、会議資料を電子化し、Web会議システム等で会議を行うといったことも可能です。

2.コスト削減

紙を使用する運用では、紙代・印刷費・輸送費・廃棄費といったコストに直結するものの他に、紙書類の保管場所や保管費用、ファイリングや封入封緘作業といった人手に関わる人件費など様々なシーンで費用がかかります。

ペーパーレスにより、これらのコストは大幅に削減することができます。紙運用の際に発生していた業務も削減でき、その分の人手を他業務に充てるといった最適化にもつながります。

3.管理・運用の効率化

先ほど挙げたタイムカードの例で見てみましょう。勤怠管理にタイムカードを使っている場合、経理担当者は打刻漏れがないかタイムカードを一つひとつ確認し、さらには休暇申請との突き合わせ、時給計算の場合は給与を計算するなど管理運用のために膨大な労力がかかります。しかし、システム化すれば、これらの大部分が削減できます。
また、紙の申請書などを使っていると、参考にしたい過去の申請書を探し回るなど、本来不要な手間が発生します。これもシステム化することで検索機能を利用して短縮されます。

紙資料が減れば、当然ながらファイリング作業や封筒詰めといった作業も減り、それに要していた手間も削減・効率化されます。

4.リスク軽減

紙書類を電子化することにより、物理的な紛失や盗難の危険や劣化のリスクはなくなります。また、アクセス権限をつけ、ログを取ることで機密文書へのアクセスや持ち出しといった情報漏洩リスクの軽減にもつながります。

また、地震や火災・津波などの災害により保管されていた書類が使用できなくなるといったリスクも運用次第で回避できます。

ペーパーレス化のデメリット

1.システム導入時のコスト

ペーパーレス化するにあたり、何かしらのシステムを導入する必要がありますが、当然システム導入には費用が掛かります。導入するシステムにより費用は様々ですが、イニシャルコスト、ランニングコストがかかってきます。また、システムを利用するためのPCやタブレット端末の用意、場合によっては社内のネットワーク環境の強化も必要になります。

2.システム障害のリスク

電子化された書類の管理はシステム上で行われます。そのためシステム障害が起きることも頭に入れておく必要があります。書類が閲覧できなくなったり、最悪の場合データが消える可能性もあります。システム障害に対しては回避する方法も多くあるのでシステム導入時に必要な対策も合わせて検討しておきましょう。

3.電子化できない書類がある

現在、政府はペーパーレスを推進していますが、すべての書類を電子化できるわけではありません。例えば、マンションやアパートの賃貸契約書など、書面で交付することが法律で定められている書類は電子化できません。そのほかにも重要な書類は電子化することができない場合があるため、ペーパーレスを進める際に、予め確認しましょう。

ペーパーレス化の注意点

ペーパーレス化を進めるにあたっていくつか注意しなければならない点があります。

1.最低限のIT知識が必要

ペーパーレス化により電子化された書類を扱うにあたって、ITの知識も少なからず必要です。PCなどのIT機器に対すして苦手意識を持っている人もいます。システムを導入しても活用できなかったら意味がありません。苦手意識のある社員には講習などのサポートを行い、理解を深めることで誰でもスムーズにシステムを利用できるようにしましょう。システムの導入効果を最大限発揮するためにも、使用する社員への配慮は不可欠です。

2.社内ルールの整備

ペーパーレス化にあたり社内ルールの整備を行う必要があります。例えば、どの書類をどの手順で電子化するか、ファイルの命名規則をどうするか、閲覧権限はどうするかなどです。ルールを決めるには、現状の業務フローの整理、見直しが必要です。

3.セキュリティ対策

システムを導入するためには、情報漏洩などのセキュリティ面の対策が必要です。セキュリティ対策の不足による情報の漏洩は、自社のみならず顧客や取引先にまで被害が及び、企業の信頼を損ねます。導入の際には、セキュリティレベルチェックシートを作成するなど、自社に適切なセキュリティレベルをしっかりと見極めましょう。

まとめ

近年ペーパーレス化は政府を挙げて推進する重要な課題となりました。ペーパーレス化の目的には、業務改善による効率化とコスト削減、環境保護があります。ペーパーレス化によって柔軟な働き方への移行、コストの削減、管理・運用の効率化、リスクの軽減などの業務改善や効率化を行うことができます。

また、ペーパーレス化は森林保護や二酸化炭素の排出を軽減するなどの環境保護にも繋がります。昨今ではSDGsを目的として「持続的な開発目標」のため、ペーパーレス化を推進する企業も増えています。

ペーパーレス化を進めるには注意すべき点もたくさんあり、一筋縄ではいきません。
しかし、政府が電子化を一気に推し進めている今、ペーパーレス化は避けては通れない課題と言えるでしょう。

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