導入事例
ニッスイが目指す「ペーパーレス物流」の舞台裏
この記事のサマリー
- 紙依存がもたらす非効率な業務や環境への負荷が課題
- 「紙に仕事を縛られない」の実現に向け、コラボフローを導入
- 依頼書の標準化とマスターの一括管理で業務が飛躍的に効率化
- 年間200万枚の紙削減と依頼書処理のスピードアップで物流が進化
- 利用拠点の拡大で目指す、さらなる業務改革

サプライチェーンマネジメント部 事業企画課 永島 孝啓 様
創業114年、新しい”食”で健やかでサステナブルな未来の実現を目指す
ニッスイは1911年トロール漁業により創業し、現在では、水産・食品・ファインケミカル・物流の事業を柱に、国内外で事業を展開しています。「人々により良い食をお届けしたい」という志のもと、健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい“食”を創造することを目指しています。
物流事業では、倉庫事業、運送事業、通関事業など、調達からデリバリーまで全ての物流プロセスを一気通貫で担うことで、食品の質の向上を支えています。
今回は、ニッスイならではの物流の形を企画し、新規事業開拓や生産性革新に取り組んでいるサプライチェーンマネジメント部(以下、SCM部)事業企画課の永島様に、コラボフロー導入の背景や選定のポイント、活用方法などについて伺いました。
コラボフローを導入した背景
紙依存がもたらす非効率な業務や環境への負荷が課題

物流の現場においては、トラックによる運送、工場や倉庫での保管、在庫管理、データ入力など、多岐にわたる依頼が社内・グループ会社・さらには社外間で行われ、その数は月に数万件にのぼります。特に、ワークフローが社内で完結しないケースも多く、何十年もの間、依頼書は紙での受け渡しやFAXで運用するのが一般的でした。
物流依頼書の一例を挙げると、申請者から最後の倉庫までの間に6枚もの紙が出力され、リレーされるという無駄が起こっていました。それらの依頼書と伝票書類を合わせると、2022年の時点で年間約500万枚以上を排出していました。この紙媒体の多さは、業務効率を阻害するだけでなく、環境負荷の観点からも改善が求められていました。
特に課題となっていたのは以下の点です。
紙の保存・管理の煩雑さ:物流依頼書や記録書類を紙で管理しており、保存スペースや保管作業に手間がかかる。
FAX送信の非効率性:手作業でのFAX送信は時間がかかり、承認フローの進捗が不明で再送することも。
業務プロセスの複雑さ:複数部門間で紙を使った業務連携が行われていたため、トラブルやミスが発生しやすい。
SCM部は社内でも特にタイトなスケジュールの中で業務を遂行する機会が多い部署で、
時には緊張感が漂うことも少なくありません。その中で、依頼書が紙ベースで運用されていたため、不在の担当者に渡せなかったり、担当者が席にいても忙しそうで声をかけづらかったりといった問題も発生していました。
こうした課題を解決するためにも、紙の削減だけではなく、「仕事のやり方を変え、価値の高い仕事に力点を」という視点が求められていました。
コラボフロー選定のポイント
「紙に仕事を縛られない」の実現に向け、コラボフローを導入

物流依頼フローは、通常の社内承認フローとは異なり、複雑な経路を通り、正確かつスムーズな処理が求められます。
そのため、操作性が重要であり、入力やクリックの回数を最小限に抑える工夫が必要です。また、依頼内容にある「誰が、どこへ、どの商品を、どのタイミングで」という各条件によって依頼フローが変わるため、高い柔軟性も欠かせません。
当社では元々、社内稟議書の申請に別のワークフローシステムを使用しており、物流依頼にも転用できないか検討しました。
しかし、物流現場では緊急性や操作性が重視されるため、既存システムでは課題が残りました。
そこで、情報システム部が先行して導入していた「コラボフロー」に注目しました。このシステムは、現場スタッフが手軽にフォーム登録を行える点や、カスタマーサクセスの手厚いサポートが高く評価されており、SCM部でも採用を検討するきっかけとなりました。
コラボフローの強みは、現場の要件に応じて柔軟にカスタマイズできることです。物流依頼のような複雑な条件にも対応でき、1アカウントあたり550円という手軽な価格設定も導入を後押ししました。さらに、モバイル対応で外出先から処理が可能なため、「紙に仕事を縛られない」運用が期待できます。
これらの要件を踏まえた結果、コラボフローが最適なソリューションであると判断し、SCM部でも採用に至りました。
コラボフロー活用のポイント
依頼書の標準化とマスターの一括管理で業務が飛躍的に効率化

紙削減の鍵は「依頼書の標準化」
2023年3月、部内の横断チームを編成し、ペーパーレス化プロジェクトが本格的に始動しました。また、各課の紙の出力状況を調査し、FAXからの出力や紙を用いた照合作業といった物理的な紙の利用を廃止するために、業務オペレーション全体を見直しました。ペーパーレス化については、システム化で対応する案件と運用の中で削減する案件に分けて検討しました。
プロジェクトの中で浮かび上がった主な課題は、Excel形式の依頼書が統一されておらず、人や部署によって内容が異なっていたことです。この標準化作業には苦労が伴いました。まずは各自がどのような項目をなぜ加えているのかを調査し、その中で取捨選択を行いました。そして、前例にとらわれることなく、全体最適となる標準フォームを何度も試行錯誤しながら作成しました。
2023年の4月にコラボフロー担当者にお越しいただき、チームメンバー向けの操作説明会を実施、5月には販売店の株式会社三千和商工様と共にシステム要件定義と開発をスタートさせました。プロトタイプが出来上がるまでに、半年の時間を要しました。
9月には、一部の部署でスモールスタートを実施しましたが、運用を開始すると、「ここが使いにくい」「この部分を改善してほしい」といった現場からの要望が次々と寄せられました。これらの課題を一つひとつ解決しながら、導入範囲を徐々に拡大していきました。また、工場や倉庫など現場へは直接訪問し、「コラボフロー導入のメリット」を丁寧に説明し、現場の納得を得たうえで導入を進めました。幸いにも、導入を見送った現場は一つもなく、すべての部署や現場で導入のメリットを実感していただくことができました。
マスター一括管理がもたらした効率化と正確性の向上
現在、コラボフローはニッスイグループ全体に段階的に導入されており、全国の工場、営業支社、研究所、運送会社、冷蔵倉庫、貿易部門など、約30の部署・拠点に展開しています。また、運用を支える基盤として、数万件に及ぶ重要な取引先マスターや商品マスターのメンテナンスは、障がいがある社員で構成された弊社のビジネストラストチームが担当し、定期的に更新を行っています。さらに、複雑なシステム改修については情報システム部と連携しながら進めています。
以前は、マスターの更新作業が現場ごとに行われていたため、忙しさから更新が滞り、コードと商品名がずれたまま申請が通るといった問題が発生していました。しかし、現在はビジネストラストチームが一括管理を行い、常に最新の状態を保つことができています。これはコラボフロー導入により業務が標準化された成果の一つです。
システム改修についても、コラボフローのサポート期間が終了した後も社内で自走できるようになり、そのメンテナンス性の高さを実感しています。一方で、利用拠点や部署が拡大するたびに、「これも追加が必要」という新たなニーズが生まれるため、改修作業は現在も進行中です。
コラボフローの導入効果
年間200万枚の紙削減と依頼書処理のスピードアップで物流が進化

現場のミスやトラブルが激減 業務に集中できる環境の整備も
現在、商品の配送依頼や出荷・入荷依頼、輸入品の検査依頼、仕入れ先への発注依頼など、さまざまな用途でコラボフローを活用しており、SCM部では月間約4000件の申請が処理されています。
導入から1年で、コラボフローによる効果も含めて紙の排出枚数は年間約200万枚削減しました。これまでの紙とFAXによる運用と比べ、承認の進捗が把握できるようになり、FAXの再送が不要になりました。また、現場からは保管スペースの削減にもつながったとの声が届いています。
さらに、依頼書作成時の入力ミスや紙の紛失といったトラブルが大幅に減少しました。過去のフォームを再利用することで、新規作成時の手間も削減。また、社外から申請や承認作業が可能になり、リモートワークがしやすくなっただけでなく、メンバー間でのフォローや共有がスムーズになりました。
こうした改善によって、紙の依頼書回付に伴う移動や不要な会話が減り、タイムロスやストレスの減少につながりました。その結果、SCM部内の緊迫感が和らぎ、落ち着いてデスク作業を進める時間が増えています。さらに、残業時間の削減や業務の簡略化につながったという効果も報告されています。
倉庫現場での変化!物流の2024年問題に明るい兆し
コラボフローを導入した倉庫からは、依頼書を事前に確認できる点が非常に好評です。従来は、トラックが到着しても依頼書が届いていないか、直前に届いて出荷準備がギリギリになるといったトラブルが頻発していました。しかし、コラボフローにより依頼書を事前に確認できるようになったことで、荷物の準備をあらかじめ進めることが可能になり、倉庫側で「この申請がまだ送られていません」と早期に気づけるようになりました。
紙の依頼書では、リレーのどこかで滞ると最後の倉庫作業にしわ寄せがきてしまい、出荷や配送が遅れることでトラックの待機時間が増えるという課題がありましたが、この取り組みによって改善が見られました。特に「物流の2024年問題」とされる車両不足や手配困難な状況が進む中、依頼書の処理が少しでも早まることは非常に重要なポイントとなっています。

今後の展望
利用拠点の拡大で目指す、さらなる業務改革

社内の業務効率化は進んだものの、外部取引先との連絡業務では依然としてメールやFAXが使用されています。紙削減の一環として、インターネットを活用し、パソコンから直接FAXを送信する仕組みに移行しましたが、次の目標は、コラボフローで生成した帳票を自動でFAX送信できるようにすること、また受信したFAXをOCRで読込み、自動でコラボフローの依頼書を作成することです。これらの仕組みを構築することで、相手がFAXを利用している場合でも送受信作業がワンクリックで完結できるようになります。
さらに、依頼内容に基づく社内基幹システムへの手動入力作業も多く残っており、API連携や他システムを活用して自動化を目指しています。
2024年度には利用拠点や部署、ユーザーの拡大を進め、2025年度には本格的な業務改革と効率化を実現する計画です。これにより、業務改善と生産性向上を一層推進することを目指しています。
お客様情報
社名 | 株式会社ニッスイ |
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URL | https://www.nissui.co.jp/index.html |
事業内容 | 水産事業、食品事業、ファインケミカル事業、物流事業など |